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2020年3月30日 (月)

業界の特性

皆さん、こんにちは。
 食品スーパーで店長をしている「てっちゃん」です。


この週末。

  欧米の買いだめを連想させる動き。

都知事の記者会見によって都民だけではなくその周辺各県の特に食材への買い物行動が一気に加速した。
スーパーマーケット団体やテレビ放映される店舗スタッフも、食材は十分にあるし入荷の予定通りであるから、慌てずに冷静に買い物行動をして欲しいとのテレビ映像も流れていた。

  しかしテレビ報道は前回のトイレットペーパーの時と何も変わらない。

ガラガラになった売場の棚を写し、テレビを見た人たちを結果的には煽るだけの報道。
今回のコロナショックから考えさせられるのは、マスメディアとして事実の報道はその自由を約束されているとはいえ、不安を煽るという逆効果も十分にあり得るということである。

しかしお客様の買い占めや買いだめもわからないではない。

  続々と休業を宣言する外食や商業施設。

これでは自宅で過ごさざるを得ず、必然的に数日間の3食の食材が人数分必要になる。
やはり冷蔵庫を満タンにしておく必要はあろう。

そしてつくづく思うのは、この業界(食品スーパー)の特性。

  食べることは生きること。

その根幹を握る使命が我々業界には課せられているということである。

  だからこのような状況下ほど逃げられない。

それが普段からお店を利用してくださるお客様への最大の使命であろう。
値段でもない、サービスでもない、とにかくあるべき商品がしっかりと棚にあるという基本の原則。

  そしてその基本の原則にお客様の期待値が集中する。

そして以前にも記したが、このような有事の時ほどこの業界は競争の世界から解放され、存在価値を高めていく。

  有事の時。

それはこのような外出したくてもできない状況に陥った時。

  更には地震、水害等の天災の時。

このような状況になればなるほど、お客様は生きるために食材を我々業界から購入する頻度が高まる。
それは、有事が深刻になればなるほどその頻度は異常なほどに高まっていくのである。

  平時には考えられないような異常な買い周り。

それは人間の本能である「生きる」ための行為でもある。

  有事になればなるほどお客様は本能に基づいて行動する。

それが食材の購入である。
それも安価かどうかは問題ではない。

  問題なのはあるかないか。

確実に品揃えしているお店ほど期待値が高まりお客様集中する。

  逆に平時の平和な時ほどこの業界は競争の世界に巻き込まれる。

平時においては、人々も安心して食材の購入が出来る環境になり、食材の買いだめ心理のない時代になると、豊富に存在する我々食品小売業は一気に競争の時代に変貌し、お客様の獲得競争が競合店との間で急速に発展していくことになる。

  更にお客様もその豊富な食品小売業を冷静に選択できる環境になる。

とにかく近くで食料品があるという店舗の選択基準から、より自分の生活スタイルにあった商品や価格面でも日々のチラシからどのお店を選択しようか、更には清潔感のあるお店、接客面の良いお店から自分のお気に入りのお店が近隣の豊富にある店舗から選択できるのである。

更に内食だけでなく、外食や外出により家で食事を作るという選択肢以外にもより自分のその日のスタイルにあった食事の摂り方も選択できるのである。

  そんな環境においては我々の業界は熾烈な競争に晒されるのである。

経営的には上記の有事に方が安定し、利益も高まるであろう。

  しかし私は安定した競争の下で仕事をしたいものだ。

それはそういった環境下の方が今までの経験を生かせるからであろうか、なぜかそちらの環境の方が安心して仕事に取り組めるのであある。

  有事と安定。

現在は有事。

  しかしいずれまた安定期が訪れ、競争が激化していってほしいものである。






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商売」カテゴリの記事

コメント

ただのバイトさん、コメントありがとうございます。
井の中の蛙。
一般的にはその諺は「もっと外に出て世の中を知れ」というような内容ですが、こうやって最後までその意味を追ってみると、井の中の蛙に徹することもまた別の意味で重要なのかと思いますね。
当方は長年スーパーの店長職という存在でしたが、結果的にはその長さが井の中の蛙状態ではあったものの、逆に言えばそこから見えるスーパー業界や商品以外の業績要因、更には競合店との関係においても一商品だけではなく品揃え全般からの店舗の強みを活かす競争対策を学ぶことも出来たし、店舗は一つの商品であることの大切さも知ることができました。よって、なんでもかんでも井の中の蛙が否定されるかといえばそうでもない。やはりその環境での奥深さを知るということは個人の考え方次第なのかと感じますね。
そして最後のTo live is to love, to love is to leave.
Lとveを上手く引用した格言。
私には、「人生とはより良き死を迎える為の修行の場」と感じたのですが、これは私だけでしょうか(笑)。

投稿: てっちゃん | 2020年3月31日 (火) 11時24分

第01肉屋さん、コメントありがとうございます。
食材は全国に十分に供給可能な量があるのでしょうが、どうしても普段の商品動向に合わせてシフトを組んでいたり人員を出社させていたりと、今回のように得意な状況に陥り需要が極端に過多になると、店舗側が供給できなくなる。その瞬間に売り場の棚が白くなってしまう。そこにマスコミが撮影する。そしてそれが全ての状況であることを全国の方が認識してしまう。そして更に買いだめが加速していく。だからと言ってそのシフトを即解決できるかといえば人材とその育成が前提となる。
何れにしても時間はかかりますね。

投稿: てっちゃん | 2020年3月31日 (火) 10時11分

k,kさん、コメントありがとうございます。
→きっちりお客様に満足できる買物環境整えないといけませんね
全くその通りですね。
特に我々の使命は生鮮食材も含めた安定した供給。そしてその流れは当面続くでしょうから人材面でも早々に対応していきたいですね。

投稿: てっちゃん | 2020年3月31日 (火) 10時01分

dadamaさん、コメントありがとうございます。
都知事の会見、積雪、そして新店開店での合同チラシとトリプルパンチでこのお店で自店の開店以上に盛り上がる形になってしまいました。
但し昨日の月曜日は比較的平常に近いお客様の動向。
やはり週末の巣篭もり生活が最大の要因でしょうか。

投稿: てっちゃん | 2020年3月31日 (火) 09時52分

毎度毎度、僕がコメントしたくなるような記事を書いてくださる店長さんには感謝と尊敬の念しかございません。本当に勉強になります。
そしてそれを読んだ上で、僭越ながら、無礼を承知で大ベテランの店長さんに青二才が盾突かせて頂きますよ、笑

>有事になればなるほどお客様は本能に基づいて行動する。
>問題なのはあるかないか。
>逆に平時の平和な時ほどこの業界は競争の世界に巻き込まれる。

いいえ、そうとも言い切れないのではないでしょうか、笑
もちろんこれらの言説は全て真実だと思います。ただ「ある」か「ない」かの選択で、「ある」場合は確実にそこにいくつかの傾向が読み取れ、仮説を立てることができるはずです。
そもそも最低限の命を守るインフラとしての需要は一回りはしました。今はそこに+αが確実に読み取れます。

さぁ、何が売れてます? 保存食品だけですかね。非常時だから売れると言っても、「あれ?」と思うような動きをする単品がありますよ。

例えばホットケーキミックス。今、売れています。何故でしょうか? そして次に何が売れるでしょうか? あるいは何を売るべきでしょうか?

例えば普段は手土産用の銘店コーナーの御茶菓子やカステラの詰め合わせ。今、売れています。何故でしょうか? そして次に何が売れるでしょうか? あるいは何を売るべきでしょうか?

そして食品スーパーとは関係ありませんが、今、紙媒体の本が再び売れ始めています。そこから何が読み取れるでしょうか?

商品、サービス、ビジネス、なんでも必ず成功する、ヒットするには、「3つのT」と呼ばれる要素が全て揃っています。

「3つのT」とは①Time(タイム)②Timing(タイミング)③Theme(テーマ)です。

タイムとタイミングは似ていますが、タイムは時間と言うより時代が求めている物、時代を読む(分析する)力という意味合い、タイミングは機会を逃さないということでしょうか。
例えば以前話した改装は、主旨(テーマ)は時代のニーズ(タイム)にマッチしていたものの、改装の時期(タイミング)が悪くて結果を出せませんでした。
あるいは某ハンバーガーチェーンが健康ブームやヘルシーなハンバーガーを売って欲しいという顧客の声(→タイム)を基に、ヘルシーバーガーをトマトなどの生野菜が一番美味しく感じる夏に投入した(→タイミング)ものの、実際は不健康なものを欲しがっている(→テーマ)層が圧倒的ということで、この手の類のハンバーガーはことごとく売れませんでした。だからテキサスバーガーとか、グランみたいなおおよそ世間の健康ブームとはかけ離れたような商品の投入に舵を切り、成功したわけです。

さて、今これだけ売れているということは、この3つのベクトルが有事には全て食品スーパーに向いているということなんですよね。
でもそれだけで片づけないで、どうせなら、そこからもっと深堀して、この有事の時(タイム)に、より普遍的な要素(テーマ)を見つけて今まさに求めているものを売りたい(タイミング)ものです。

家に引き籠って、皆さん何をしているんでしょうか。本を読んだり、ゲームをしたり?
だったら片手で簡単に食べられて、手が汚れないものを提案してみてはどうか?
(余談ですがポーカーが大好きだったサンドイッチ伯爵が片手で食べられるものを作れと言って誕生したのがサンドイッチですね、笑)
あるいはパソコンや紙媒体のお供に、自宅で簡単にカフェ気分が味わえる提案。
有事であっても、いくらでも、考察・分析して差をつけることはできるはずです。

そんなことを言っても僕はまだまだ「井の中の蛙」ですけれども。
でも、この諺には続きがあるんですね、笑

「井の中の蛙大海を知らず、されど空の蒼さ(深さ)を知る」

これからもよろしくお願いいたします。

追伸、食べることは生きること。

では生きることとは? これは英語の格言から引用しましょうか。

To live is to love, to love is to leave.
(生きることは愛することであり、愛することは別れることだ。)


 

投稿: ただのバイト | 2020年3月31日 (火) 03時05分

東京にいる息子・娘らのために食料を送る・・
そういえば、私の時もばあちゃんが1週間に1回食料を配達してくれたこと思い出しました。
主に野菜・総菜パン・菓子・¥だったかな。

それで今、パンが品薄になっているのか・・。
地方のディスカウントも品薄感がある一方
年配層の衝動買いが増えた気がします。

投稿: 第01肉屋 | 2020年3月30日 (月) 23時56分

こちらでも買いだめが煽っておりますが、お客様に聞くと東京にいる子供達に送る為に買っているらしいです。もうスーパーに品物がないからと。 今回の棚卸しは在庫絞らず売り場マックスです。一日の広告も強烈な売価になるでしょうから大変です。コロナで仕事がない事に比べればありがたい事です。それも含めて、きっちりお客様に満足できる買物環境整えないといけませんね。

投稿: k,k | 2020年3月30日 (月) 19時38分

東京を筆頭に関東特需の影響でこちらの商品供給にも影響が出て参りました。とりわけ、チラシ・特売商品の交渉が厳しいようです。更には物流増大による配送体制の見直し。
今夜も都知事の緊急会見が予定されてるので内容次第では更なる混乱を招く恐れもありますね。そちらは積雪も重なり混乱も増幅した事とお察し致します。

投稿: dadama | 2020年3月30日 (月) 17時39分

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