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2018年2月22日 (木)

都内MRから

皆さん、こんにちは。
 食品スーパーで店長をしている「てっちゃん」です。


てっちゃん会翌日。

  都内をMRする機会に恵まれた。

会のメンバーのご厚意により、都内の話題のお店をメンバー数名と共に案内をしていただいた。

ある話題のお店などはトレードショーがらみで、でさながらその延長戦の様相を呈していたほどだ(笑)。

  今回見せて頂いた企業の変貌ぶりには大いに驚かされた。

かって、てっちゃん会の前座でMRをして見比べた企業も含まれており、たかだか2年ほどでのその企業の変貌ぶりには本当に目を見張らせるものがあった。

  2年前の前座ではメンバーから否定の嵐。

その企業の最新店舗をMRさせて頂いたが、かってはオペレーションには定評あるものの、売場はいたって平凡で単なる物置きとも取れる売場展開でしかなかった企業が、このほどの店舗視察では提案型の軸がしっかりとした、それでいて基本に忠実で鮮度感、賑わい感、そして単品量販による明確な提案型の売場作りをしてきている。

  正直、一番変化した企業を一番初めにMRさせて頂いた。

そんな感動からスタートした今回の都内MR。

  どの店舗も自社の特性を十分に発揮した店舗であった。

その中で、ある店舗を視察したときに、ある深さを感じざるを得ない店舗があった。

  今一番話題の店舗であろうか。

お陰で、トレードショーとの連動で多くのMR者が小さい店舗に視察をしていた。

  お客様を数えるのが難しいほどに。

そしてそのお店を視察した時に、ある複雑な想いが込み上げてきた。

  外部の評価は決して高くない。

それは、従来のその企業の強みを一切捨てて、都内の一等に本当にベーシックなそれでいて上質な商品の品揃えを試みた店舗であった。

  従来のその企業が持つ強みを一切捨てている。

これは何を意味するのだろうか。
その企業の強みとは、惣菜を中止とした即食類や各部門毎のミールソリュージョン。

  しかしそれにはそれ相応の人材が必要となる。

今後の出店を考えた場合に、一店舗一店舗の開発において、従来ほどの人材を投入できる環境からはどんどん遠ざかって行く。

現状でもアップアップの状態で既存店を運営しているのであろう。

  今後そのコンセプトを継続できるのか。

その葛藤が今回のこの新店舗のトライではないのだろうかと思った。

  5年後を憂い抜いた果ての方向転換。

その模索がこの店舗の存在意義ではないだろうかと思う。
だから、従来の強みを捨ててでも、新たな強みを人材難の時代に向けて模索した中でも新規出店。

  だから期待して視察すると期待を外してしまう。

それほど、奥深い出店なのであろう。
そして、その新店舗に隣接する競合店を一様に見て回った。

  一つは圧倒的なディスカンター。
  二つは横串の通った高質スーパー。

この二つに挟まれた中での、新たな試みを持った新規出店を比較した時に、すでに新規出店したものの、ここで生き残る余地の無さ、存在価値の低さを改めて認識させられた。

  しかしそれでももがきながら試みに挑戦する姿勢。

その姿勢こそが、これからのこの企業の原動力になって行くのではないだろうかと思う。

  その部分だけでも視察できたことが非常に嬉しかった。








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「てっちゃん会」」カテゴリの記事

コメント

ただのバイトさん、コメントありがとうございます。
今回も奥の深い見解をありがとうございます。
改めて思うのは、地域に根ざす存在にならなければならないということ。
そしてその地域にあっては絶対的な存在であるということ。その為に、1k商圏内の存在価値を如何に絶対的なものにしていくか。そいういう意味では、あの店舗を地方ではなく、あの1k商圏に数万人がクラス地域で出店、トライすることでその検証ができるのであろうと思います。
あの事例をヒントに、関東周辺の平均的な生活者が住まうエリアでの今後をどう占うか。今後のあの企業の出店が楽しみですね。

投稿: てっちゃん | 2018年3月24日 (土) 06時28分

ご無沙汰しております。久しぶりの書き込みでいつにも増して長くなります。ご容赦ください(笑)

さて…

「都内の一等地」と「ミールソリューション」でどのお店のことか、わかってしまいますね(笑)
原点に帰るという意味で、店舗の名称をカタカナから漢字にしたあの高級住宅街にあるあのお店のことですよね?

しかし…

「ここで生き残る余地の無さ、存在価値の低さを改めて認識させられた」とありますが…

ひと月前、あのお店に足を運んだ「僕」の意見は全く違います。
「ここで生き残る」の「ここ」を分析すればするほどそうは思わない。これはど素人の若造の意見なので、売り場やその他諸々に精通した専門家の皆さんとは違う視点なんだろうと思いますが、身の程知らずにも敢えて真っ向から「僕」の意見をぶつけてみたいと思います。

言わずと知れた高級住宅地の中にあるそのお店に北側の駅から歩いて行きましたが、まず驚かされたのは、そのお店が面している通りを走るバスの本数の多さです。所々狭い道もあり、こんなところを大型のバスが曲がるのかと思われるような箇所も。お店に行くまでにいくつかの停留所がありましたが、どの停留所にもバスを待つお客さんが数人並んでいる。足を止めて時刻表を見ると、日中でも5分以内にバスが来るような高頻度な運転間隔。そして走っている自家用車や自転車をあまり見かけない。
このエリアに住めるような所得があれば、当然マイカーを持てるはず。それでも公共交通が充実しているということから何が読み取れるか? 
マイカーなら時刻表を気にせず経路も固定されず、好きな時間に好きなところに行ける。しかも見ず知らずの他人を車内で気にすることもない。子供が騒いでも構わない、食事だって化粧だってできる。マイカー乗り回し漬けの生活に慣れれば公共交通は使わない。そうしてバスを使わないから減便され、減便されればますます利用者が減り、廃止される負のスパイラル。今慌てて、高齢化社会だ交通弱者だ買い物難民だと言って税金投入してまでバスを維持、復活してくださいとやっているが、一度潰してしまったものをもう一度使える状態までにするというのは気が遠くなる時間がかかる実情。

しかしこの地域はそうではない。私交通ではなく公共交通を使う文化が根付いている。
ちなみに公共交通と倫理感というのはそれだけで論文が書けるような大きなテーマです。見ず知らずの人と同じ空間を共有する、マイカーの中では誰かのために席を譲るなんて気持ちは芽生えない。

次に店内にあるお客様からの投書が貼られたボード。苦情より圧倒的に賞賛意見が多い。苦情という苦情は1件だけ。あとは品揃え等の要望とお褒めの言葉がだいたい半々。
その中で印象に残った意見は次のようなもの。

「大雪の翌朝、バスの中から見ると朝8時の時点でこのお店の前だけ雪かきが全て終わっていて感激しました!」

店内の話ではない、このようなことに気付き、わざわざ投書が来る。こういう地域であるということ。

まずこの2点から読み取れることは、多少の便利さよりも大事にしなければならないことがあるということと、自分たちが普段受け取る商品やサービスが、どれくらいの人たちの労力によって成り立っているのか、それに対価があるということを、意識無意識に関わらず知っているということ。突きつめれば便利さ「だけ」を追求することが巡り巡って自分たちの首を絞めることになる、ということが恐らく認識していなくても実現できている地域だということ。

僕らの仕事というのは社会の無理のしわ寄せを受けやすい。またそれを各所にまき散らす側にもなる。正月に店を開ければ、今まで休めていた運送業者やメーカーの工場勤務の人間まで休めなくなる。そういうことが積み重なって社会は疲弊していく。
この店に行く途中で24時間営業のディスカウントスーパーがありましたが、「年中無休!」「24時間営業!」「即日配達!」「手数料無料!」「送料無料!」…
こういった言葉の対極にある考え方なんだろうと思います。

そして同じく投書の中に複数あったのは、大きすぎる肉や魚の塊を、店員さんに切り分けて欲しいと言ったら快く引き受けてくれて、感じも良かったというもの。
これこそまさに小売の原点です。小売を指すリテール(retail)とは卸売されたものを再び(re)切る(tail)、各々のお客様に合わせたサイズに切り分けて売るという意味です。物を売るということを通してそこから生まれる様々なものが、この仕事の意味です。お客様のために小さく売る、これが小売です。

こちらの会社はそれまで飛ぶ鳥落とす勢いで拡大を続け、この業界の勢力図を塗り替え、大手スーパーの業績が軒並み伸び悩む中でも業績は右肩上がり、この業界を牽引するトップランナーと言っても過言ではないかと思います。
しかしここで敢えてブレーキをかけた、その意味を「僕」は人手不足ということ以外にも見出したいと思います。

かつて同じように小売業を席巻した会社のトップは「私の車にはブレーキはいらない、アクセルだけでいい」と拡大を続けたものの、いつの間にか「消費者が見えなくなった」となり、
「あのお店には何でもあるけど、欲しいものは何もない」と言われ、今その屋号が消えようとしています。

組織が大きくなればなるほど、初心、原点から離れて行ってしまうもの。周りの期待に応えなければならない、成長し続けなければいけない、という強迫観念みたいなものもあるのかもあしれません。

しかし人であれ、組織であれ、自分たちには帰る場所がある、との認識があれば何にも恐れず、迷いも消えるものです。
何もかも失っても、自分(たち)には帰るべき場所がある、それが原点ということです。根っこがしっかりしているんだから。

聞くところによると、それでも駐車場が少なくて客数に影響しているとのことですが、是非、目先の数字にとらわれずに歩んでほしいと思います。このお店の存在意義というのはそういうことではないと思ってます。個人的にも応援したいと思えるような暖かいお店でした。

最後に偉そうなことを言いますが…

以前、こちらのブログで店舗はただの建物ではない、生き物だということをおっしゃっていましたね。
そうであるならば、生き物であるというのであれば、当然その土地が醸し出す空気を吸い、その土地が育むものが血となり肉となり育っていくはずです。ただの建物や備品やレイアウトを視察するだけがMRでしょうか?
このお店の周りに暮らす人々が作る空気、そこに生きる人々の息づかいを感じることができなくて、何の視察でしょうか?

投稿: ただのバイト | 2018年3月24日 (土) 02時01分

dadamaさん、コメントありがとうございます。
一番大きな変化は、5年後の人材難に焦点を当てたときにどんな店舗運営のシミュレーションを描くかと言うことでしょうか。
そのシミュレーションに自社の強みが描けなければ敢えてその強みを捨ててでも未来に焦点を当てる。その潔さに今回は感動しました。

投稿: てっちゃん | 2018年2月22日 (木) 23時53分

dondon-kiさん、コメントありがとうございます。
非常に複雑な心境でしょうか。
やはり当面はこの状況を客観的に静視していくしかないでしょう。
何れにしても、試行錯誤の連続が待ち受けていると思います。

投稿: てっちゃん | 2018年2月22日 (木) 23時50分

チェーンストア理論の勇もディスカウンターやドラッグストアの価格軸の商売に対し将来を鑑みて舵を切る現実。ネット社会も交え商売の法則が見えにくくなった現在、リスクを背負いながらも将来の方向性を探らねば生き残れない時代になりましたね。その観点においても現場の声をリアルタイムに聴き、臨機応変に変化する対応が求められる。本部と現場の信頼関係が益々重要になってくるのでしょうね。
 

投稿: dadama | 2018年2月22日 (木) 21時20分

明日弊社の新業態の一号店がオープンします オープンするのは関東ですがこの地元の地方局もこぞって取材し紹介してます 店内は圧倒的にディスカウンターのお店 わずかに弊社を感じられたのは弊社のPBの菓子がわずかに並んでいた棚だけでした 地元テレビ局から聞かれた感想は弊社らしくない 大事にしてきたものを捨て新たな挑戦をしなければならない そう、ならない、やらなければいけない状況なのです

投稿: dondon-ki | 2018年2月22日 (木) 19時08分

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