バイトが笑った
皆さん、こんにちは。
食品スーパーで店長をしている「てっちゃん」です。
当店に在籍するアルバイト。
総勢15名ほどいるだろうか。
以前に、女子のアルバイトの接客態度の良さを記したが、今回は男子を記してみたい。
男性アルバイト。
どちらかといえば、女子よりもドライである。
お金の為、学費の為、趣味の為。
そんな明確な目的を持って働くアルバイトが多い。
だから、男性アルバイトは全て大学生だ。
働くスピードは早くテキパキしている。
しかし、その態度は接客業で働くというよりも、お客様との関係も無機質であり機械的な印象を拭えない。
先日、お盆の抽選会があった。
毎年、8月12日〜13日に実施する当社のお盆のイベント。
通称「ガラポン」。
今では懐かし、中から玉の出る抽選機を使用するレトロな企画。
この抽選機、希少価値がついて、今では5万ほどもするという。
抽選機を製造する職人がいないらしい。
本格的に木造りのこの抽選機は味わいがあり、今後10年も20年も活躍するであろう頑丈が作りである。
そしてそれを運営するのがアルバイト。
人員不足のお店は最悪の場合、この抽選機を副店長が朝から晩まで付きっ切りで対応せざるを得ないお店もあるという。
しかし当店はアルバイトが比較的豊富。
よって、副店長に抽選会をアルバイトの応援で運営させるよう指示をした。
一番の目的は、副店長をフリーにさせることである。
それによって、お盆商戦という年に何度もないイベントにおいて、副店長もフリーな立場で参加できるからである。
よって、各部から集められたアルバイト5名で抽選会が運営されたのである。
そして当日。
いつもは真面目な男性アルバイトが、ゲラゲラ笑いながら抽選会をしているのである。
私はその男性アルバイトが笑ったのを初めて見た。
それも、本当にゲラゲラ声を出して笑っているのである。
“この子も笑うんだ”
その男性のアルバイトが大学生だが、面接の時から物静かであまり感情を表に出さないタイプの男性であった。
当初は、副店長について黙々と抽選会をこなしていたのだが、その男性が終了間際に近寄ってみると、その男性アルバイトとお客様がなにやら談笑しながら抽選会をしていたのである。
その後に、その男性アルバイトに声をかけた。
「抽選会は楽しかったか?。」
そしたら返答が帰ってきた。
「すんげ〜、楽しかったです(笑)。」
楽しいという前に「すんげ〜」という形容詞を付けてきた。
「また、やってみたいか?。」
「はい、是非。」
そう返してきた。
男性のアルバイトにとって、お客様とは言っても、無機質な存在なのだろう。
働く目的はお金のためであり言われたことをしっかりこなすことが最優先。
そんな先入観を持って働き始めた小売業の世界。
しかし、抽選会を通して人間の感情を露わにするお客様に接する機会を得た。
“お客様も喜怒哀楽を思い切って表すんだ”
その表情に触れた時、自分も同じように喜んだり悲しんだり、がっかりしたり。
お客様も人間。
そう感じた瞬間、仕事の楽しさが見えてきたのかもしれない。
後日、今回参加したアルバイト全員にアンケート用紙を配布した。
抽選会での感想。
こうしたかった。
人生にどう役立つか。
このアンケートから、アルバイトの仕事を見直して見たいと思った。
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コメント
ただのバイトさん、コメントありがとうございます。
なんとも感動する物語ですね。
自分の行為がただの品出しなのか、それともお客様一人一人の食卓に幸せを呼ぶ行為なのか。そう考えると、この商品を購入された一人一人の食卓を覗いて見たくなりますね。
そしてそれを教えてくれた上司の仕事観も素晴らしい。素晴らしい方々に恵まれたバイト時代だったんですね。
投稿: てっちゃん | 2017年8月23日 (水) 07時59分
2回目の書き込みになります。ただのバイトでございます。以下はフィクションです。
「君が品出しをするから世界は変わる。
明日を変える発明も、世紀の大発見も、
君が品出しをした食品が食卓に並んで、そんなものを食べて、
命を繋いでいくから生まれていく。
もちろん何も変わらないかもしれないよ。
でもそれは、君が品出しをしているから、
ありふれた、ささやかな、でも幸せな、
そんな家族の日常が、変わらずに済んでいるのかもしれない。
そう考えると日本の経済を動かしてるのって、
永田町とか霞ヶ関とか、大手町や兜町にいる人じゃなくて、
この店にいる××君かもね!」
この時、つまらない‟陳列機械”でしかなかったただのバイトの目は輝いた。陳列という「形」だけの仕事に「意味」が生まれた瞬間だった。
バイトの帰り、自分が品出しした商品を買い物袋に入れて歩いているお客さんを見た。何だか嬉しくて、「それを品出ししたのは僕です!」なんて、近づいて、得意げになって言ってみたい衝動にかられる、子供のようなただのバイトだった。
その時、ただのバイトが品出ししていたのはパンだった。
「パンとサーカス」
「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」
パンは、しばしば歴史の表舞台に登場する。そしてパンが、食料が、滞りなく行き渡ることの意味を考えてみるのだった。
1年後、後輩のバイトにこんなことを言っていた。
「company(カンパニー)って言葉の語源知ってる? 間にpan(パン)って入ってるでしょ? そこに一緒にって意味の接頭辞comが付いて、名詞化する接尾辞yが後ろにきて、語源的な意味合いは一緒にパンを食べる(分け合う)こと。日本語で言う同じ釜の飯を食う、ってこと。だから仲間、同僚、転じて会社!」
「へぇ。」
あの時、この売り場が世の中と、世界と、過去と未来と、いろんなものに繋がっているということを教えて頂いた主任、今でも感謝しております。
ただのバイトより
投稿: ただのバイト | 2017年8月23日 (水) 01時10分
dadamaさん、コメントありがとうございます。
社員やパートさん達はある程度長期間の就業期間がありますから、関係も刹那的ではありませんが、アルバイトはせいぜい3年程度。そして一番多感な時期にアルバイトをするわけですから、そこで成長できたと言う実感も高いのでしょう。ガラポンを新入社員同士でチームを組ませて実施させたり、アルバイト同士でチームを組ませたり、色々とやり方はあるかもしれませんね。
投稿: てっちゃん | 2017年8月22日 (火) 06時27分
私も多くの学生バイトを送り出しましたが最終日の閉店後、店内に向けて「お世話になりました。ありがとうございました。」と深々と最敬礼していった男子バイトに出会ってからアルバイトト言えど一緒に働く時間は一期一会であり社会人として旅立つ準備期間として責任持って預からねばと感じました。
投稿: dadama | 2017年8月21日 (月) 21時27分