学生を前にして
皆さん、こんにちは。
食品スーパーで店長をしている「てっちゃん」です。
先日、学生を前に話す機会があった。
終盤期の学生の来季採用で、その会場が当店で行われた。
震災以来、本部会議室等の復旧工事等で、当店で採用活動を実施してきた
経緯があり、その流れで最終の採用説明会もコストの関係から当店で実施さ
れたのだ。
“人事主体での説明会だから、今日は気軽に店舗の仕事ができるか”
そう思って、安心していたら、人事部長からいきなりこう言われた。
「てっちゃん、良い機会だから、現場の店長の話を10分程度学生にしてくれない
か。」
午後の夕市前だったので、時間的にも準備的にも、面喰らった。
「えっ、突然ですね!。」
「そんな難しく考えること無いよ。店長としてスーパーマーケットマンとして仕事
の楽しさを語ってくれればいいよ。」
“なるほど、そう言われれば簡単だ。今思っていることを伝えよう”
急に気楽になり、夕市の15分前から学生の前に立った。
「就職戦線も終盤になり、皆さんもここに来る前にはたくさんの企業を訪問した
ことでしょう。そして今日ここで私と向かい合っている。最後の最後にここで合い
対している訳です。これも何かの縁でしょう。せっかくのこの縁ですから、私も皆
さんに私が思っているスーパーの仕事の面白さを私なりに感じているところで話
をしてみたいと思います。」
学生の視線が変わってきた。
“よし、もっと引き付けてやれ”
「この話は、ここにいる人事の〇〇さんにも、隣にいるアシスタントの××さん
にも話したことの無い話です。皆さんに話すのが初めての内容です。」
“学生の目が輝いてきたっ!。よしよし!。”
「皆さんは、スーパーの店長って、どんな仕事をしていると思っていますか?。」
私は、前列から座っている学生に順番に聞いて回った。
「えぇえぇ~っと、人を管理する仕事です。」
「人に、指示を出して、仕事をさせる人です。」
「人をまとめて、組織で仕事をしていく人です。」
「売場計画をまとめる人です。」
徐々に学生も話す事に慣れてきたようだ。
「なるほど、皆さんいろいろ研究をしてこられたようですね。それはある意味全
て正解ですが、私自身の立場から言えば、それらの優先順位は低い。」
「私は、店長の仕事とは、戦いだと思っています。半分リアルで半分バーチャル
な戦いだ。ゲーム感覚で店やお客様、競合店との関係を位置し、リアルにはそ
の事によって昇給昇格を左右し、場合によっては降格もあり得る。」
「だから、日々、真剣勝負。そう思えば、この店舗の総指揮官として、身の回り
のものは全て私の武器だ。ここにいる人事部長や人事という組織も私の武器
であり、隣のアシスタントが属する商品部も私の武器。そしてメーカーが造る
商品もバイヤーが提案する販売計画も、販促のチラシも全て私の武器。当然
私の部下の部門の担当者も直属の武器と言える。」
「だからと言って、血も涙も無いゴルゴ13のような存在ではなく、感情も心もあ
る人間としての武器だ。それらの人を活かして、商品を活かして、そこから派生
する情報も取り込みながら、他の競合店との戦いで、地域のお客様をオセロの
裏を表に変えて、お客様を獲得する陣取りゲームだと思っている。」
私の話に引き込まれていた学生の目が、爛々と輝いてきた。
「だから、自分の武器を磨く事が、日々の私の仕事であり、磨いた武器が予想
以上の活躍をすると嬉しいものだ。本部の存在もその存在価値を活用して自
分の店舗を磨くのにどう活用するかを考え、タイムリーに支援を要請し、勝てる
商品という武器の調達を要請したりする。だから店長とは、人にも商品にも地
域にも強くならなければならない。」
学生たちは、そんな話を聞くのは初めてなのだろう。実感はないのだろうが、皆
大きく頷いていた。
「わずか15分という短い時間ですしたが、そんな事を念頭に置いて私は今仕事
をしています。もし今日の縁が続いていれば、来年の今頃は皆さんの中にも、
私の武器として磨かれている人がこの中にいるかもしれませんね。その時は
また宜しくお願いします。それでは、私はこの後、下のお店で夕市に励みます
ので、この場から離れます。失礼しました。皆さんも就職活動頑張ってください
。」
下では、慌ただしく夕市前の準備が進んでいた。
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