年末ドキュメント
皆さん、こんにちは。
食品スーパーで店長をしている「てっちゃん」です。
12月の31日。
厳しい年末商戦ではあるが、31日だけは、クリアしなければならない壁がある。
それは、私にとっては、心の支えでも、ある売上金額の「大台」である。
このお店の店長として、2年目から乗せてきた金額だ。
ある年は、31日だけクリアし、またある年は、30日、31日とクリアしてきた金額。
どんなに低迷しても、この大台だけは、乗せなければならないと、思ってきた。
この日は開店の出だしから、「ちょっとスローペースかな?」、と思っていたが、
12時の段階で、相当厳しい数値が現実に現れてきた。
開店直後から、冬型の好天に恵まれ、お客様の出足が悪かったのか。
「今日は、最後まで、わからないな。」
もちろん、大台へ向けての予測だ。
相当、厳しい場面が、後半にやってくるだろうことは、確かだ。
売場は、各部門が全精力で演出している。
あとは、お客様を迎えるだけ。
しかし、昨日の動向とは裏腹に、際物(おせち、年越し蕎麦等)が動かない。
ここの動きは、今年は早め早めで推移しているのか、今日の動きは鈍っていた。
ようやく14時を過ぎてからだろうか、本格的にお客様の動向が、年末商材へ
向かってきたのは。
刺身、お寿司、蕎麦等の動きが本物になってきた。
その後は、一進一退だった。
大台のペースに近づき、遠のき、まったく縮まらないペースで推移した。
1時間ごとに、内心、もどかしさが募ってきた。
しかし、私は、天気、お客様動向、商品動向から、
必ず夜の8時まで、お客様は来てくれると信じた。
何故か?
主力のかまぼこが、予定数量まで達していなかったから。
私は、年末動向、更には、最終日の動向を、主力のかまぼこの動きから
判断する。
主力のかまぼこは、嘘をつかない。
毎年、正直に、きっちり数量を合わせてくる。
31日の主力単品のかまぼこは、前半でどれだけ売れようが、売れまいが
ほぼ定数で毎年推移するものだ。
その主力かまぼこ。
今年は、29日の段階で、早々とバイヤーに追加注文した。
それ以前の動向が良すぎて(逆に高単価品が動かなかった)、29日の最終
投入の段階で、「明日の4時には完売してしまう。」と判断した。
その主力かまぼこが、まだ底が見えていない。
「このかまぼこが無くなるまでは、お客様は絶対に引かない!。」
そう信じていたから、このままで31日は終わらないと判断していた。
私は、生鮮惣菜の各チーフに、値下げを極力引っ張るよう、指示した。
「必ず、この後、波がくる。値下げは6時まで我慢しろ。」
そして、売上の大台への期待も、まだまだ捨てきれない。
売上とは、商品という弾(たま)を持つから、創ることが出来るのだ。
焦って値下げに踏み切り、弾が無くなった段階で、ジ・エンドだ。
「売上の大台には、弾は欠かせない。」
最終のお客様の波が来るまでに、どれだけの弾を売場に残せるかだ。
ここから先は、お客様との我慢比べだ。
そこからは、私同様、全員が必死になった。
ようやく、4時以降からの動向で、主力かまぼこにも底が見えていた。
各チーフも、だんだんと焦りの色が出てきた。
「本当に、売り切れるのだろうか?。」
そして、6時から、各部の値下げが、精肉を皮きりにスタートした。
更に、まぐろ類、サクもの類、そして牛肉に移り、盛り合せへ、最後は寿司。
お客様の流れが、うまく各部へ流れ、だらだらと午後8時まで続いていった。
そして、午後9時。
最終のチーフミーティング。
売上は、どう見ても、大台に10万届かない。
「残念ながら、今日の最終は、大台に10万足りない。ここ3年間続けてきた
大台も、まだわからないが、この年を持って割ることが確実だ。しかし、各
部門とも精一杯よくやってくれた。その結果としてのこの数値を素直に受け
止めるしかない。」
今日初めて、部下には、弱みを見せた。
そして、この言葉で、各チーフの顔は救われたという表情に変わった。
私は、この言葉をもって、大台への夢を断ち切った。
その後、最終11時を終える部門(グロサリー)への援助を、生鮮各部からの
協力も得て、ようやく閉店、更には11時に近づいてきた頃だろうか、売上報
告を担当する部下が私に言った。
「店長、最終大台に乗りましたよ。」
「何っ、本当かっ!。いくらだ。」
「大台に+1万です。」
「やったぁ~~っ!。」
“みんなの力だ”
そして、従業員だけの店内へ、店内放送。
「従業員の皆さま、本日の最終売上は、大台に乗りました。」
「皆さんの全員のおかげです。御苦労さまでした。良いお年を!。」
一体何が、売上の大台へと押し上げたのか?。
リーダーが諦めかけた結果を、部下の力で実現してしまう。
大晦日。
最後の最後まで、気を許せない時間が続き、皆の力が共鳴した瞬間だった。
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コメント
スーパー大好きママさん、コメントありがとうございます。
スーパーの内部にまで興味を持っていただいて光栄です。
表面の売場や商品の裏側には、いろいろなドラマが隠されているのですよ。
それを感じながらお買いものされるのも、また楽しいものだと思います。
そんな感度で、またコメント頂けたら幸いです。
投稿: てっちゃん | 2010年1月 3日 (日) 23時54分
てっちゃん店長、売り上げが大台に載ってよかったですね!おめでとうございます!
まるで冬の荒海で大物マグロを追う漁師のような活きの良いお話に、ぐーっときました。
かっこいいです!
てっちゃん店長のつぶやきを広告にちらりと載せてみてはいかがですか?
私だったらぐっと身近に感じるし信頼感がアップするなあーー。なんて、素人考えです。
これからも頑張ってくださいね。
投稿: スーパー大好きママ | 2010年1月 3日 (日) 16時33分
ふるたさん、コメントありがとうございます。
なるほど、それも一つの手法ですね。
私は、そんな執念や粘りが大好きです。
そして、そんな姿を見せつける事が、最大の部下教育だとも思っています。
格好良く、スマートに結果を残せるほど今の状況は甘くは無い。
泥臭くとも、執念を燃やし粘って粘って粘り尽くす、そん姿勢が、後々の部下への刺激になるのでは、と思っています。
投稿: てっちゃん | 2010年1月 2日 (土) 22時03分
自分なりのこだわっている売り上げのラインってありますよね。
以前、副店長をしていた時に同じく大台に後少しという事があって、店長と話しあって、閉店をこっそりと30分ずらした事がありました。
違反やけど、こういうこだわりをする店長も少なくなったように感じますね。
投稿: ふるた | 2010年1月 2日 (土) 13時26分